公共選択学会 第20回学生の集い

3年生テーマ「日本社会は持続可能か」

解題:
 現在の日本が直面する状況としては,人口が減少する中で少子高齢化がますます進行し,財政や社会保障制度の持続可能性が危ぶまれています。特に過疎地域を中心に,このままでは将来コミュニティを維持できない地方も少なからず存在する状況です。また,東日本大震災による被災地では復興が遅れており,被災者の生活再建に時間がかかっています。その際に発生した福島原発事故に端を発した日本のエネルギー政策についても方向転換を迫られており,原発の是非を含めてエネルギーの安定供給の問題が問われることとなりました。こうした問題は,地球規模での環境問題を問い直すことにもつながっており,現在,様々な分野で持続可能性が問われています。
 今回の学生の集いでは,「日本社会の持続可能性」について議論してもらいます。上記の問題意識のうちの一つを選んでも,複数を組み合わせても,はたまた上記以外で重要と思われる論点から議論する形でも,論題の設定は日本社会に関するものであれば自由です。
 一方,論文を書くにあたっては,以下のことに注意しながら書いてください。1点目は,「日本社会」をどう捉え「持続可能性」の多義性を踏まえた上でいかに定義するかについて明記してください。その際に,局所最適を考えることは全体最適につながるのか,持続可能性は特定のテーマか複数テーマの組み合わせで考えるのか,といった点にも留意してください。2点目は,それぞれの問題意識に従い,現状把握・現状分析・現状(政策)評価をしたうえで,どの政策主体がどのような政策対応をすればよいのかを明示してください。3点目は,持続可能な社会を構築するための政策対応の利害得失をどう把握し,その政策対応で経済厚生が悪化する個人や地域(あるいは他国)をどのように取り扱えばよいのかも踏まえてください。4点目は,政策のリアリティを考えるうえで,提示した政策は現行の憲法や法律を変える必要があるのか,変える必要があるならば改正の実行可能性をどう検証するのかについて,立憲段階か立憲後段階かといった点にも着目しながら議論してください。5点目は,自分たちの政策提言が有効であることを科学的根拠に基づき論証してください。具体的には,提案する政策の効果を提示した上で,どのような理論分析ないしは実証分析のモデルを用いているのか,そのモデルは先行研究との対比で独自性があるのかについても言及してください。
 上記のテーマ設定および条件は,現実の政策を考えるにあたり必要な問題発見,検証,政策提言および政策実現プロセスをすべて内包するものになります。自分が政策担当者であるという当事者意識も持って,日本が直面する大きな問題について真摯に向き合ってください。
参考文献:
 限られた文献を挙げることはテーマの広さからして望ましくないと考え,参考文献は提示しないことにしました。各ゼミ・パートの研究課題に基づいて,適切な文献を学生諸君が自力で探し出すことを期待しています。

2年生テーマ「公共インフラ投資と今後の維持管理をどうすべきか」

解題:
 公共インフラは社会生活・経済活動の基盤であり,それに対する適切な投資と維持管理は,日本社会の持続的な発展に不可欠です。今日の公共インフラ投資には,たとえば,東日本大震災から 6 年がたち震災の記憶が風化しつつあると感じる中で,今後の復興をどのように進めたら良いか,オリンピックのために整備が必要な新国立競技場などが当初よりも巨額の費用負担がかかることが予想される中でどの程度の規模に収めるべきなのか,そしてオリンピック後の施設維持はどのようにすべきであるか,道路や橋などの公共インフラが今後大量に再投資や大規模な補修を必要とする時期を迎えようとしており,その費用を誰がどうやってまかなうか,といったさまざまな議論があります。さらに,人口減少や人口構造の変化によって不要になった公共施設(学校や公民館等)の統廃合や再活用は地域の課題であるし,公共施設のファシリティマネジメントはその有効活用だけでなく,財政面の効率化も期待されており,地方自治体にとっても重要な政策課題となっています。
 今回の学生の集いでは,日本社会の持続可能な発展のために求められる公共インフラ投資と維持管理のあり方について,公共選択論の観点から,各ゼミの特徴を生かした政策提言をしてもらいます。特に,公共インフラ投資における集合的意思決定について議論を展開すること,Public Private Partnerships や費用負担は誰が行うのかといった点についてもしっかりと議論することが重要です。
参考文献: 基本文献として,以下を挙げておきます。
・長峯純一(2014)『費用対効果』ミネルヴァ書房。
その他は,各ゼミ・パートのテーマに沿ったものを適切に選んでください。

加藤賞選考委員会

川瀬晃弘(東洋大学),鷲見英司(新潟大学),平賀一希(東海大学),横山 彰(中央大学)

∧ このページの先頭へ